Gamvieno( ゜八゜)ノBlog
ヴァナ・ディールを仄かに暖める、髭が魅力のガンビーノが綴る物語・・・
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2005年 04月 30日
「闇を司る精霊よ、その力にて敵の光を奪え。ブライン!」
「そは大地の包容力。草木を芽吹かせし自然の恩恵を、我らに分け与えるであろう。」 「くそ。なんて硬い甲羅なんだ。手が痺れちまうぜ。てりぁあ!」 「治癒の光よ、マサトの体を癒し給え。ケアル!」 「もう少しで足を止められるわ。・・・よし、今よ!」 「そこだ。食らえ!」 マサトが加えた打撃によってできた殻の亀裂に、ガンビーノの剣が突き刺さった。緑色の 体液を噴出し、泡を吹きながら倒れていく蟹。力尽きたのを確認して、チックリィ達は それぞれ武器を収めた。 セルビナを出て1週間が経っていた。6人はジュノまでの旅費を稼ごうと、その素材が 比較的高く取引されている蟹を狩るために、セルビナの東にある海岸で戦っていた。 この辺りは、凶悪なゴブリンもめったに近づくこともなく、夜になって現れる不死生物にさえ 注意していれば、安定した収入を得ることができる。 チックリィはふうっと一息つくと、疲労度の激しそうな仲間から順番に回復の呪文を 唱えていく。 手ごわい敵を6人で力を合わせて倒した後の達成感は、今までのそれとは全く違う。 6人になって初めての頃は、セルビナの町をすぐ出たところにいるウサギにさえ、必死で 戦っていてそれどころでは無かったのに。 夕焼けで辺りが赤く照らされた頃、いつものように6人は移動を始めた。辺りよりも一段 高くなっている丘で野営をするためだ。マサトやガンビーノが集めてきた枯れ木や流木に、 クーニャンが精霊魔法で火をつける。ぼっと明るくなる焚き火に、薄暗かった丘の上に 椰子の木の影がくっきりと浮かんだ。6人はそれぞれ装備品を外して手入れを始めた。 チックリィは近くの小さな岩に腰掛け、水筒から水を一口飲んだ。 今日も無事に一日が終わったことに感謝すると、魔法による精神的な疲労もこの瞬間は 少し和らぐ気がする。 6人での戦闘は、この一週間でそれぞれの役割もはっきりして来た。敵に対して 直接的な攻撃をするマサトとガンビーノ。側面や背後からその動きを止めたり体勢を崩す グラスアイ。歌による強化補助を行うマクシィ。精霊魔法で攻撃をするクーニャン。そして、 毒や体力の回復を行うチックリィ。 互いに位置を確認しながら、他の仲間に攻撃を与えている敵の隙を突いて打撃を 与えたり、攻撃の合間を縫って暗闇や麻痺の魔法を唱えたりと、戦闘中は何かと気を 使って忙しいが、時間とともに少しずつ慣れてきた。 次の朝、戦利品を換金するために、一度セルビナに引き返すことにして、6人は海岸を 出発した。 しばらくしてある岩場に差し掛かった時、岩陰に隠れていたゴブリンが不意に襲い かかってきた。 今までの蟹と比べると、その知能の高さから戦闘は困難を極め、なかなか致命傷を 与えることができなかった。仲間が傷つけられる回数も増えて、回復魔法を唱える チックリィの精神力も限界に近づいてきた。魔法詠唱による精神的な疲労で、チックリィが 気を失いかけて膝をついた瞬間を、ゴブリンは見逃さなかった。 マサトの攻撃をかわすと、ゴブリンがこちらに猛然と走り寄り、切りかかってきた。 もうだめか。目をつぶったチックリィは、鈍い音と同時に光が遮られるのを感じ、再び 目を開けた。 すると、目の前にあったのはガンビーノの左手に持たれた盾だった。そして、左膝を ついてよろめくガンビーノ。ゴブリンの攻撃はその盾をかすめて、彼の左足を深く傷つけて いた。苦痛にゆがむガンビーノに、ゴブリンは致命傷を与えんとナイフを振りかざした。 しかし次の瞬間、ゴブリンは背後からの重い一撃を受け、口から赤い血を噴出しながら その場に倒れこみ、その目は二度と開かれることは無かった。 セルビナに到着しても、傷を回復しながらガンビーノに礼を言うと、いつも助けられてる からお互い様、と笑顔を見せた。チックリィは、仲間の命を預かる重み、仲間の存在に よる安心感を強く受け止めた。
by gamvieno
| 2005-04-30 18:54
| 小説 『Freaks戦記』
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