Gamvieno( ゜八゜)ノBlog
ヴァナ・ディールを仄かに暖める、髭が魅力のガンビーノが綴る物語・・・
|
|
2005年 04月 28日
扉を開けた瞬間、グラスアイは店内の雰囲気が外の賑わいとまるで違っていて驚いた。
静かな店内に竪琴の音色だけが広がっていて、客たちはその演奏者に注目していた からだ。客達は、グラスアイの発した音に不快を感じて、戒める様な視線をこちらに送って きた。グラスアイも、立て付けの悪い扉に心の中で悪態をつきながら、そそくさと仲間を 店内に促し、入り口近くの開いているテーブルに腰掛けた。顔が熱くなってきて、今にも 心臓が口から飛び出してきそうなほどの恥ずかしさに、必死に耐えていた。 しばらくして竪琴の音が止み、聞いていた客達から演奏者に拍手が送られていた。 ようやく冷静さを取り戻したグラスアイは、演奏者が女性のエルヴァーンであることに その時まで気付かなかった。 店内が客達の談笑や料理をする音で満たされるのを待って、グラスアイは張り紙に あった冒険者募集の相手を探すことにした。張り紙には、赤いリボンをつけたタルタルと 書かれていたが、雑然としている店内と、客の合間を隅々まで探す羽目になった。そして、 ふと先ほどの演奏者の方を見ると、彼女の傍らに赤いリボンをしたタルタルの姿が目に 入った。 予想しがたい客達の動きや、店員が行き交う中を巧みに避けながら、ようやく グラスアイはそのタルタルの元へと移動することができた。どうやら彼女が魔法使いで、 さっきの演奏者が詩人の2人組なのだろう。 「あの、張り紙を見てきたんだけど、仲間を探してるっていうのはあなた達?」 声をかけられて、詩人の楽器の片付けを手伝っていたタルタルは振り返って微笑んだ。 「はいそうです。私はチックリィといいます。張り紙を見て来てくださったのですね。 ありがとうございます。」 「まだ、冒険者の募集をしてるんだったら、一緒にどうかなぁと思って。」 喜んで、とチックリィはうなずき、相方のマクシィを紹介した。 グラスアイが二人を仲間の元に連れてくると、お互いに簡単な自己紹介を交わした。 グラスアイはこの6人なら、ジュノまでの険しい道中も安心して移動できると確信した。 しばらくこれまでの事を話している間に夕暮れ時となり、そのまま6人は食事を取り、 6人の合流の喜びとこれからの冒険に乾杯をした。 グラスアイの愚痴にマサトが反応して、それを見て転げまわって笑うクーニャンと 一緒に笑うチックリィ。ガンビーノとマクシィはこれからの進み方などを熱く語っていたが、 お互い酒の為にシドロモドロな会話を繰り返していて、さらに仲間の笑いを買った。夜遅く まで談笑は続いた。 宿屋へ帰る途中、ガンビーノの肩を借りてフラフラになって歩くマサトの背中を押し ながら、グラスアイはこの仲間たちとの出会いに感謝していた。いつまでも、こうして 楽しく過ごせますようにと、故郷とは違う夜の星空を見上げて思っていた。後ろから来た マクシィに気がついて、酒で少し赤い顔の二人は微笑みあった。 マサト達3人とは別の部屋を取り、グラスアイはマクシィとチックリィの3人で休むことと なった。 酒の酔いが醒めるまで、3人はベッドに入ったまま、しばらく会話を楽しんだ。一人で 寝ることが普通だったグラスアイは、2人の同居人に少し興奮している気持ちを、酒の せいにしようと思った。 カーテンの隙間から入った朝日が、グラスアイのベッドに差し込んでいた。いつの まにか眠ってしまっていたらしい。酒には強い彼女はすぐに飛び起き、カーテンを開けて 部屋にいっぱいの光を取り込むと、マクシィは眩しがって太陽に背を向けた。チックリィは 眠たげに目をこすりながら、おはようと言葉をかけてきた。 冷たい水で顔を洗って食事を済ますと、身支度を整えて3人は部屋の外へ出た。丁度、 クーニャン達も部屋から出てきたが、マサトとガンビーノはまだ酒が抜け切らない様子で、 しかめ面で挨拶を送ってきた。 宿屋を出ると、6人はセルビナで装備品など冒険の必需品を購入し、旅の支度を終えて いった。 6人に降り注ぐセルビナの太陽は、白い砂地のキャンパスに6人それぞれの形を描いて いた。
by gamvieno
| 2005-04-28 12:30
| 小説 『Freaks戦記』
|
ファン申請 |
||