Gamvieno( ゜八゜)ノBlog
ヴァナ・ディールを仄かに暖める、髭が魅力のガンビーノが綴る物語・・・
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2005年 04月 27日
波に反射された太陽の光が、さまざまな形・大きさになって船の側面にあたる。生き物の
ように見えるその光から視線をはずすと、水平線と空の境界線がかろうじて青色の濃淡で わかるほどの、雲ひとつない快晴だ。 湿気や汐の香りを十分に含んだ風を体いっぱい浴びて、マクシィは甲板の上で大きく 伸びをした。 出航して二時間ほど経つが、まだ船の揺れには慣れない。軽い船酔いのような状態に なっているのかもしれない。船が出発してからずっと、船上ではしゃぐチックリィを見て、 マクシィは少し羨ましく思った。 甲板では、冒険者達がそれぞれ思い思いの船旅を満喫している。甲板の縁から釣り糸を 垂らして船釣りをする者。階段を椅子代わりに座って武器の手入れをする者。一緒に 戦ってきたパーティたちと談笑する者。船首で景色を見ながら語り合う恋人達。たくさんの 荷物を抱えている商人達もこの船に同乗していた。 マウラとセルビナを結ぶ定期船は、戦闘に疲れた心にひと時の安らぎを与えるには 十分な時間を供給しているようだった。 タロンギ渓谷を抜けてブブリム半島へと入ったマクシィたちは、かすかに漂う磯の香りに 誘われるように、マウラの町へとたどり着いた。ブブリム半島の南東に位置するマウラは、 古くからウィンダスとサンドリア・バストゥークを結ぶ海上の要衝である。この地方からは、 メリファト山地・ソロムグ原野を抜けると、ジュノ大公国に行けるのだが、道中は険しい谷が 入り組み、またヤグード族の居城・オズトロヤ城からも近いため、強力なヤグード族が 徘徊していて、余程の経験を積んだ冒険者でなければ通り抜けることは至難の業である。 当然、マクシィたちもマウラを経由して、セルビナ・ジュノを目指すことにした。 汚れた衣服と砂埃にまみれた体を拭くため、早速宿屋を決めると装備品を脱いで軽く 汚れを払い、暖かい湯で体を拭いた。タロンギ渓谷から一気にマウラへと進んできた ために、疲労をかなり溜め込んでしまったが、ウィンを出発して初めて屋根のあるところで 眠れると思うと、うれしさの余りベッドへ横になって、その直後にマクシィはうとうとと 居眠りを始めてしまった。 そんなマクシィを体拭きから戻ったチックリィは見つけて、その隣に潜り込んで一緒に 寝るのだった。 夜になって少し寒くなってきたのを感じて眠りから醒めた二人は、港に程近い酒場へ 食事をしに出かけた。 さほど大きくない店内は、冒険者達であふれていた。魚介類の料理の美味しそうな 匂いが立ち込めていて、それまで食事をしていなかった二人は、空いた席をみつけるや 否や食事の注文をして、驚くほどの速さでそれらを平らげていった。ふと我に返って お互いの形相を確認して、料理を噴出さんばかりに笑ったほどだ。 サンドリア産のワインを飲んでいい気分でいると、冒険者の一人が竪琴を奏で始めた。 かなり経験を積んだ吟遊詩人のようで、その指捌きは熟練の域に達していた。他人の唄を 聴くのも久しぶりで、得るものも少なくないと感じたマクシィは、酒に酔いながらもその 音色に耳を傾けた。 唄の内容は、間抜けなゴブリンが冒険者にからかわれるといった内容のものだったが、 笑って聞いている客の中で、マクシィはこれほど客を虜にするその演奏者に尊敬の 眼差しを送っていた。 酒場から宿屋へ帰ってからも、その演奏法や調子を真似したり口ずさんだりした。 「まもなく、セルビナ港に到着いたします。お手荷物の確認をお願いします。」 水平線から大陸が見え、だんだんと大きくなっていった。同じ空が続いているはず なのに、違う大地を踏みしめるとそれが変化して見えてくる。手荷物を確認して船から 降りたマクシィは、これから得る経験に期待と不安を感じていた。チックリィが傍らで 微笑んでいるのを見て、いくらか不安を払拭することができた。 新しい譜面に記されていく音符の拍子は、マクシィの鼓動にあわせて早くなっていた。
by gamvieno
| 2005-04-27 08:18
| 小説 『Freaks戦記』
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