Gamvieno( ゜八゜)ノBlog
ヴァナ・ディールを仄かに暖める、髭が魅力のガンビーノが綴る物語・・・
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2005年 04月 19日
重い金属の鎧の継ぎ目が互いに当たって、ガチャガチャとうるさい音が出る。こんな
状況にならなければ、普段はさほど気にしたりしないのに、今はこの音が煩わしい。 ロンフォールの森を抜け、ラテーヌ高原で魔物と対峙して、はや幾日が過ぎた事だろう。 ガンビーノは時間の経過を、生やした髭を触りながら考えるのが癖になっていた。 その風格も、実力を伴ってきたと思っていた。 しかし、誰にでも失敗することがある。まさか、ゴブリンの後ろにオークがいるとは 思っても見なかった。 後ろにゴブリンとオークを引き連れて、重たい鎧の音を気にしながらも、全力で敗走する ガンビーノの眼に、うさぎ2匹に同じく追いかけられているタルタルの姿が入った。 魔法使いらしく、手には杖を持っている。 いつの間にか、ガンビーノとそのタルタルは併走していた。互いに認識した。 「タルだ。」「髭さんだ。」 タルタルはすばやく足を動かすことができるため、ヒュームの自分と同じくらいの速さで 走ることができる。しかし、ヒュームがひとまたぎで飛越できる石も、タルタルには大きな 障害となる。そんな障害物を右へ左へと回避して、トテトテと逃げるその姿に、ガンビーノは こんな状況ながら笑みをこぼしていた。 自分の追跡者はなんとか振り切れそうだが、この小さなタルタルはいい勝負をしていた。 しかし次の瞬間、砂利に足を取られてタルタルが転んでしまった。うさぎ達との距離が どんどん無くなって行く。とっさに引き返すと、ガンビーノはタルタルを抱きかかえて、 ロンフォールの森の中へ入っていった。勝手知ったるこの森だ。しばらく走るだけで、 うさぎ達の追跡を振り切る事ができた。 落ち着いたところで立ち止まり、タルタルを降ろした。盾と剣を放り出し、杖を手放して、 ヒュームとタルタルは草の上で寝転がった。息を整えるまで、緑が鮮やかな木の隙間から 見える、真っ青な空を見上げていた。 「いやぁ、危なかったな。転んだときのをみて、とっさに抱きかかえたりして、すまな かった。」 「いいえ、こちらこそありがとうございました。」 恥ずかしがっているのか、ほっぺたを赤くして丁寧にタルタルは頭を下げた。 「ちょっと、あの当たりは一人でいるのは危険そうだな。どうだい?一緒に行かないか?」 ガンビーノがそういうと、驚いたようにタルタルは眼を見開いた。 「あ、でも僕はおっちょこちょいなので、ご迷惑をおかけすると思います。」 「その時は、また今みたいに逃げればいいじゃないか。」 そういうと、ガンビーノは蓄えた髭から白い歯を見せて笑った。 それにつられて、タルタルも緊張が解けたらしく、にこやかに笑い返した。 「俺の名前はガンビーノ。当ての無い冒険者といったところかな。」 「僕の名前はクーニャンといいます。まだひよっこの魔法使いですが、よろしくお願い します。」 ガンビーノにとっては、初めてのパーティだった。しかも、魔法使いだ。戦士ならば勝手が わかるが、少し不安に感じていた。自分の動き如何では、この小さな魔法使いに負担が かかってしまうかもしれない。もう、一人だけで冒険していくのではないのだ。でも、どんな 状況も絶対守り抜いてみせる気概を持とうと思った。 クーニャンも同じ思いに駆られていた。一生懸命サポートして、ガンビーノの役に 立ちたいと思っていた。先のパーティみたいな失敗はもうしない。あんな状況でも、自分の ことを気にかけてくれる戦士。この人なら、一緒にウィンダスまで行ってくれるだろうか。 それぞれ装備を整え、二人並んでロンフォールを後にする、ヒュームの戦士とタルタルの 魔法使い。 仲間となって進む彼らの出会いは、これから待ち受ける壮大な世界と比べるとあまりにも 小さい変化だが、信頼という仄かに暖かい灯火を、お互いの心に灯しているのだった。
by gamvieno
| 2005-04-19 09:54
| 小説 『Freaks戦記』
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