Gamvieno( ゜八゜)ノBlog
ヴァナ・ディールを仄かに暖める、髭が魅力のガンビーノが綴る物語・・・
|
|
2005年 10月 21日
ゴツゴツとした岩肌の凹凸が分からないほどの暗さで、目を凝らさないと周囲が見え
ない。まだ午前中だというのに、空は薄紫色に染まっていて、浮かんでいる雲が墨で 殴り書きされたように、空の一部を覆っていた。 ウィンダスの水の区から出発し、ギデアスのある西の方角を見たとき、コマはそこで 起こっている異変が、尋常ならざるものであると認識した。普段、夕日が沈んでいく西の 空が、正反対の色で包まれているからだ。 コマ達は周囲を確認しながら、ギデアスの内部へと進んでいく。ヤグードの拠点である はずの場所だが、やはり彼らの姿が無い。途中、凶暴化した蜂の襲撃もあったため、 武器を携えながらの行軍となった。 一行の先頭をシャンティが率いていた。彼女は、前回の調査団ただ一人の生き残りで、 ギデアスの地形にも詳しい。指示する言葉の端々から、今回にかける彼女の意気込みが 感じられたが、コマは彼女のその様子が、気負いすぎていて危なっかしい気がしてなら なかった。どこか余裕が無い表情に、不安も感じる。 しばらく進んでいくと、広場のような所に出た。進んできた道からみて、正面に洞窟 らしき穴がある。広場が見えるかどうかの位置ではわからなかったが、近づいていくと 洞窟の前に一匹のヤグードらしき人影があることがわかった。武器を持つ手に力が入り、 パーティの緊張も高まる。しかし、シャンティは落ち着いていた。 「人間カ。ワレラノ土地ニ何ノ用ダ?」 ヤグードはこちらの様子に攻撃態勢を取ることもなく、ただそこでゆっくりと語りかけて きた。その対応にコマ達が戸惑っていると、シャンティが一人前に出て、左手でパーティを なだめるような仕草をする。 「私たちは、ウィンダスの依頼でここの調査に来たものです。奥へ通してもらいますよ。」 「オ前ハ、以前ココニ来タ連中ノ一人ダナ。ソノ顔ニ見覚えガアルゾ。」 そういうと、ヤグードはコマ達の顔を一人一人確認しながら、話を続ける。 「コノ先ニハ誰モイナイ。仲間達ハ、コノ悪シキ気配ニ取リ込マレ、味方ヲ襲ウ者ガ出タ。 ソコデ我ラハココヲ一時的ニ放棄シテ、オズトロヤヘ非難シタノダ。」 そう言うと、ヤグードは左へ移動して、コマ達に道を譲る格好で洞窟を指し示した。 「行キタイノナラバ行クガイイ。オ前達ゴトキ脆弱ナ人間達ニ、何ガデキルノカ見セテ モラオウ。」 それを見て、シャンティは手持ちの道具入れから松明を取り出すと、火打石で火を つけた。周囲がぼんやりと明るくなり、広場の草木や洞窟のある岩肌が露になる。殿を 進んでいたファイナも同様に明かりを灯した。 パーティが洞窟へ向かって進みだす。コマは、先ほどのヤグードの前を通りながら チラッと彼の顔を見ると、松明の光に浮かんだその大きなくちばしとギョロリとした目が、 不気味に笑っているようにも見えた。 薄暗い洞窟の中は、クフィムの洞窟のように水気はなく、外と同じ乾いた砂が足元に 敷き詰められている。途中には落とし穴があるとの事なので、シャンティの先導の元、 コマ達は一列になって慎重に進んでいった。 ここも迷路のようになっていたが、シャンティは急遽作成した簡易的な地図を見ながら、 迷わず歩を進めた。右へ左へと洞窟は蛇行していたが、しばらくして行く手に外の明かりが 見えてきた。といっても、洞窟に入る前よりもさらに暗く、そのまま松明が必要なほどの 日光しか差し込んではいなかった。 外に出ると、一行はその様子に言葉を失った。松明の光に照らし出された広場は、まるで 地獄絵図のような凄惨な光景が広がっていた。鼻を突く血の匂いと同時に、ヤグード達の おびただしい数の亡骸が目に飛び込んできた。同士討ちの結果なのだろうか、そこかしこ に彼らの死体が積み重なるように倒れている。恐ろしい獣人とはいえ、肉塊となったそれら を直視するのは気分のいいものではない。エカトニスは吐き気を催している。 広場に自分達以外の動くものがないことを確認すると、コマ達は再びギデアスの奥へと 進んでいった。乾いた砂の上に大量の血が撒かれていて、コマ達の足をさらに重たいもの にしていった。
by Gamvieno
| 2005-10-21 15:39
| 小説 『Freaks戦記Ⅱ』
|
ファン申請 |
||