Gamvieno( ゜八゜)ノBlog
ヴァナ・ディールを仄かに暖める、髭が魅力のガンビーノが綴る物語・・・
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2005年 09月 22日
その日のうちにウィンダスに到着しようとチョコボを急がせたが、東サルタバルタに入った
ところで陽が落ち、辺りが暗くなってしまったので、野営をして明日ウィンダスを目指す ことになった。 チョコボの手綱を木の幹に縛り付けていると、エカトニスは何か異様な 雰囲気につつまれていることに気がついた。勝手知ったるサルタバルタの地が、普段とは 違ってざわついている。その雰囲気は仲間達も気づいているようで、互いの顔を見返しては 首をかしげている。ここに生息している魔物達は火を焚けば寄ってこないので、火の管理 さえしていれば問題ないのだが、危険な場所で行うのと同じように、その日は夜番を立てて 休むことにした。 先に夜番をしていたファイナに起こされたエカトニスは、同じくシャンティに起こされたコマ と、焚き火の回りに腰を下ろして雑談をしていた。火は回りを明るく照らしていて、魔物を 寄せ付けないには充分だった。 すると、夜には行動しないはずの野生のウサギが一匹、こちらを見ていることに気づいた。 エカトニスが不思議がっていると、赤い目を大きく広げて口からよだれを垂らしている。 咄嗟に両手棍を取ろうと手を動かすと、突然ウサギが襲ってきた。エカトニスが身構えるより 早く、ウサギは牙をむき出しにして飛び掛ってきた。やっとのことで両手棍を取り上げて、 攻撃を受けようと前へ出すと、一本の矢がウサギの胴につき刺さった。 早鐘を打つ脈のままコマのほうを振り返ると、コマも困惑した表情のままクロスボウを 携えていた。 「どうしてこんなウサギが、夜に襲ってくるにゃ・・・。」 「私にも、何がなんだか。」 そう言ってウサギの亡骸を見ていると、仲間達もその騒動に気づいて目を覚ましていた。 事情を説明して、夜番の人数を増やしてその日は過ごすことにした。その後は、魔物に 襲われることも無く、次の日の朝を迎えた。チョコボを縛っていた手綱を解き、それぞれ 乗るとウィンダスのある南へ向かった。 朝日に照らされたサルタバルタは、昨夜の出来事もあってどこか違って見える。故郷に 近づいているというのに、エカトニスの心は晴れていくどころか、不安になっていくばかりだ。 その大きな“異変”に、最初に気がついたのはコマだった。先頭から2頭目を走らせて いた歩みを緩めると、その様子に不思議がって、近寄ってきた仲間たち全員に聞こえる ように言った。 「ヤグード達がいないにゃ・・・。」 はっとして、エカトニス達は周りを見渡す。普段ならそこかしこを闊歩している彼らが、 全く見当たらない。 再びチョコボをウィンダスへと走らせるが、その道中も全くヤグードの姿を見ることは 無かった。 昼すぎにウィンダスへ着くと、門兵の数がいつもより多いことに気がついた。普段の 警備には出てこない魔道士の姿も見える。ただ事ではない空気を察する一行を、門兵は 呼び止めてチョコボから降りるように言った。 職務上の軽い質問をしていると、その中にシャンティの姿を認めた門兵は、笑顔を見せて 通してくれた。 チョコボを厩舎へ返すと、急ぐようにコマの実家であるミーティアの家に向かった。 石の区のはずれにあるその家は、大きな木と綺麗な水の川に囲まれた、古くて大きな家 だった。 懐かしさと安堵感が入り混じり、その扉を開けてミーティアの顔を見たエカトニスの目に、 涙が潤んだ。 おばあちゃん、と道具を放り出して抱き着くコマを、ミーティアは満面の笑みをこぼして 抱きしめた。 「お帰りなさい、コマ。よく無事に帰ってきましたね。皆さんも、長旅お疲れさまでした。」 尻尾をくねらせて甘えるコマを、エカトニス達はほほえましく見ていた。お手伝いの ミスラ達が、それぞれを部屋へと誘う。エカトニスも自分の部屋へ入る。数ヶ月も留守に していた部屋が、綺麗に片付けられている。読みかけていた本も本棚にしまわれていて、 自分がそろえた順番になっていなくて少しむっとした。 ベッドに横たわり少し固めの枕に頭を預けると、天井を見上げてこれからの事を考えて 不安になった。
by gamvieno
| 2005-09-22 09:24
| 小説 『Freaks戦記Ⅱ』
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