Gamvieno( ゜八゜)ノBlog
ヴァナ・ディールを仄かに暖める、髭が魅力のガンビーノが綴る物語・・・
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2007年 06月 29日
「おー!」「そこだ!もう一発食らわせろ!」「うわー、痛そう・・・」
様々な歓声が人の輪から発せられている。普段は憩いの場である広場は、今日は打って 変わって、その催しで賑わっていた。国内の腕自慢を競う武闘会が、盛大に執り行われて いるのだ。 賞品や賞金も出るとあって、参加者の鼻息も荒い。腕に覚えのある者なら誰でも参加 可能との触れ込みではあったが、流石に準決勝まで来ると、数々の修羅場を掻い潜って きたであろう強者達しかもう残ってはいない。繰り出される拳と拳のぶつかり合いは、 武芸の心得がない一般の者でも、感動の声を出さざるを得ない迫力があった。 脇腹を押さえ、尻餅をついて倒れこんだヒュム。片目を閉じ苦痛に歪む表情を浮かべて、 左手を前方に向けた。 「参った、降参だ。あんたの勝ちだ」 歓声が一際大きくなったその広場の中心には、勝ち名乗りを受ける小さな姿があった。 自分の背丈の倍以上はある対戦者を難なく破った、タルタルの格闘家だった。控えの席 へと戻ると、手ぬぐいで汗を拭い水筒の水を飲む。 「すげー、あのタルタルやるぜ。ついに決勝まで進んじまいやがった」 観客の励ましの声に笑顔を見せるも、彼女は次の決勝戦に向けての準備を淡々と 進めていた。 ドドーン。何か大きな物体が地面に叩きつけられる音が、地面からも地響きとなって 伝わってきた。隣で行なわれていたもう一方の試合が終わったようだ。一瞬静まり返った 観客が、さらに大きな歓声を上げてその勝者を讃えている。気を失ってしまった エルヴァーンの対戦者は、救護の係りに肩を借りながら退場していった。 しばらくして、人の輪を掻き分けてこちらの広場にやってくる大きな影が見えた。ガルカの 格闘家であった。どうやら決勝の相手が彼らしいことは、周囲の観客の雰囲気から伺い 知ることができた。体の筋肉は、着込んだ装備品をはち切らんばかりに盛り上がり、 握っている武器は黒光りしていて、彼の戦いの凄まじさを物語っていた。 ガルカは彼女の前まで歩み出ると、まるで小さな虫でも覗き込むかのように上から 被さって話しかけてきた。 「決勝の相手はこんな小さなタルタルかよ。せいぜい俺をがっかりさせないでくれよ。 ガハハハ」 言い放つと、ガルカは自分の控えの席へ向かって、大きく肩を揺らしながら悠然と歩いて いく。うつむいてガルカの言葉を聴いていた彼女は、それまでの作業を一瞬やめ、離れて 行く彼の背中に鋭い視線を送った。 「体の大きさが、強さの証明にはならないことを教えてあげるわ」 数分間の休憩の後、いよいよ決勝戦が始まった。余裕の笑みを浮かべて、左右の拳を 胸の前で打ち合わすガルカ。一方、彼女は両手を構え、軽くジャンプすると足を左右に 動かせて軽快にステップを踏む。大きく息を吸い込むと、ゴゥっとガルカに突っ込んで いった。そのスピードは、これまで彼女が見せてきた戦いのどれよりも早く、観客も彼女が いた場所で立ち上がった砂煙りの中心に彼女がいないことをみて、初めて彼女が移動した ことを理解した。 虚を突かれたガルカは、咄嗟に防御の姿勢を取った。その腕を彼女が拳で殴りかかる。 勢いを止めたガルカが右腕を前に突き出すと、彼女はそれを左腕で払い後方へと飛び のいた。一瞬のことで、観客も声が出ない。 さすがに決勝まで進んできたガルカも伊達ではなく、彼女の素早い攻撃を的確に受け 止め、正確な打撃を繰り出してくる。その攻撃も彼女の素早さに慣れてきたらしく、段々と 彼女の体を捉え始めてきた。彼女の息も徐々に上がって、疲労の度合いも見えてきた。 距離を取りふぅっと一息つくと、観客の声が遠くから徐々に聞こえてきた。 「がんばれ、ちっこいの!」「あんなデカブツ、倒しちまえ!」 彼女は応援の声に励まされ、最後の力を振り絞ってガルカに立ち向かった。構えていた ガルカが繰り出す右手を寸前で交わすと、渾身の打撃を胸に叩き込み、ガルカの顎を 下から蹴り上げた。必殺の一撃は、ガルカを後方へと倒し、決着をつけていた。大歓声が 彼女を包み、汗と砂まみれの顔を拭うと、右手を上げて歓声に応えた。 賞品の格闘武器と、賞金を受け取り会場の観客に会釈をすると、彼女はそそくさと広場を あとにした。 「さてと、お金も貰ったことだし、今日のおかずはちょっと奮発しちゃおうかしら」
by Gamvieno
| 2007-06-29 11:24
| 小説『WEAPON LEGEND』
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