Gamvieno( ゜八゜)ノBlog
ヴァナ・ディールを仄かに暖める、髭が魅力のガンビーノが綴る物語・・・
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2005年 04月 15日
周りの木の枝や枯れ草を拾い集めて、火打石で火をおこす。パチパチと音を鳴らして、
夕焼けの空に煙を立ち上らせていく。保存用の干し肉をかじり、水筒の水を飲む。焚き火の 光で明るくなった回りで、岩や草が炎のゆらめきで踊っているように見えた。空を見上げる と、雲間から星が顔を覗かせていた。 ここで野営するのも今日一日。そろそろ“あれ”ができる頃だ。グラスアイは、こんな面倒 くさい事ができるのは、自分のようなお人よししかいないだろうな、と笑みをこぼしながら 焚き火を見ていた。 バストゥークで「なんでも屋」という看板を出し、いろんな人のさまざまな依頼をこなす 便利屋家業も、最近になってようやく板についてきた。その依頼も、道具を仕入れてきて 欲しいという単純なものから、北グスタベルクにある臥竜の滝の水を汲んできて欲しい とか、今日の食卓のおかずが足らないから何か持ってきて欲しいなど、数多く受けて きた。元々、身のこなしが素早く、手先が器用なので大概の事は自分でできるのだが、 人手のいる仕事は他の冒険者を雇って完遂する等、手間はかかるがやりがいがある。 今日は、大工房の食堂にいるガルカの依頼で、大羊の肉を焚き火にくべて、丸一日燻す と出来上がる“ガルカンソーセージ”が食べたい、というものだった。食事はそこそこ作れる が、燻製などといった手のかかる料理はやったことがない。今まで失敗したこともあるが、 もって生まれた愛嬌と明るさで乗り越えてきた。今度も何とかなるでしょ、そう思いながら、 グラスアイはうとうとと居眠りを始めた。 焚き火の火が細くなってきた頃、岩陰からグラスアイを除く二つの眼があった。人のもの とは違う大きさだ。 相手が寝ているのを感じ取ると、ゆっくりと岩陰から身を乗り出した。ゴブリンだ。鋭く釣り あがった大きな眼、だらしなく開けられた口、右手には血のりがついたままのナイフを 持っている。獲物を睨みつけ、今まさにグラスアイに切りかかろうとナイフを握り直している。 ゴブリンが飛び掛ったその瞬間、グラスアイはバッと飛びのき、クルクルと後方に回転 して腰のナイフを抜いた。走り寄って繰り出されたゴブリンのナイフを避けると同時に、 足を掛けてつまづかせた。 ひるんだゴブリンが振り向いたとき、その首から赤い血が噴き出していた。フュッ、フュッと 声にならない呻きを残し、ゴブリンはその場に崩れ落ちた。 「そんな腕じゃ、私に触ることもできないわよ。」 最近、特にゴブリンやグゥダフといった獣人達の活動が活発になってきている。グラスアイ は戦闘で高ぶった気持ちのおかげで、朝までしっかりと起きていられた。出来上がった ソーセージを大切に懐にしまうと、焚き火の後始末をして、山を降りていった。 次の日、いつものように「なんでも屋」の看板を外に出していると、幼い姉弟がやって きた。どこか寂しげで、思いつめた眼をしながらこっちへ歩いてくる。 「あのぅ、なんでも屋さんですか?お願いしたいことがあるんです。」 その二人の様子から、ただ事では無い雰囲気を感じたグラスアイは、とりあえず部屋へ 案内した。 「それで、依頼はなんでしょうか?」 「獣人を、・・・お父さんの仇を取ってください。お金は払います。」 そういうと、女の子はテーブルの上に小銭をいっぱい広げた。ずっと持っていたのだろう、 暖かかった。 話を聞くと、父親は獣人に殺されてしまったのだというのだ。その仇といっても、特定する のは難しい。 「よし、わかりました。獣人を倒してきてあげる。でも、そのお金は大事に持っていて。」 その幼い姉弟を家に帰すと、グラスアイは思い立ったかのように店の看板をしまい、旅の 支度をした。自分の両親も獣人に殺され、今まで一人で何とか生きてこられたのは、回りの 人たちのおかげだ。 今度は自分が恩返しをする番だ、そう決心する少女の目は、さびしくも強く輝いていた。
by gamvieno
| 2005-04-15 10:27
| 小説 『Freaks戦記』
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